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低粘度オイルの問題点 GMのリコールに見る粘度の大切さ! その2

2025年、GMはV8 6.2Lエンジンのリコールを発表し、指定粘度を0W20から0W40に変更しました。これはエンジン保護に大きな意味を持ちます。今回はその背景と技術面についてより詳しく解説します。

今回のリコールの原因はクランクシャフトとコネクティングロッドの部品精度の問題ですが、それだけならオイルの粘度変更は不要です。高粘度オイルに変更することで、高油温や高負荷時でも強固な油膜を保ち金属同士の接触を防ぐことでエンジン摩耗を防ぎます。安全率が非常に向上します。安全率とは「性能にどれだけゆとりを持たせるか」で、例えば100KGの荷物を吊り下げるのに、100KGまで耐荷重のロープを使うか、200KGまで耐えるロープを使うかです。荷物の下にいるなら私は200KGロープを使用したいです。(^^;

 

下記の図で油膜の厚みの一例です。 

粘度が高いオイルほど4500回転でも8000回転でも油膜が厚く、金属同士の接触を防ぎます。これは高負荷・高温環境下でのエンジン保護に直結します。つまり安全率があがります。

 

「いやいや0W20で持つように設計されているエンジンなら0W20で大丈夫なはず!」という意見もあると思います。しかし、過酷な走行時や高油温時、未燃焼ガスの混入など、理想的な状態以外ではより油膜は薄くなり磨耗します。

 

次にオイル粘度が高いと、どれだけエンジン摩耗量が減るでしょうか?下記の図を見て下さい。縦軸の単位はnm/hの摩耗量です。

エンジン内の4カ所の1時間当たりの摩耗量で、この図からピストンリング(青色)は5W30(HTHS粘度2.6)程度の粘度があればほぼ摩耗しません。カムシャフト(黄色)ではACEA 5W30(HTHS 3.5)程度の粘度がないと摩耗が進むことがわかります。なおHTHS(高温高せん断)粘度とは、エンジンが高温・高負荷状態にあるときのオイルの実効粘度です。

 

GMがリコールによりオイル粘度を、0W20から0W40に変更した結果、通常走行でも非常に摩耗が減少します。さらに加工精度の悪さや、高油温時、高負荷時、未燃焼燃料の混入、ススの堆積などの事態に対しても、安全率にゆとりがあるので、エンジンの異常摩耗がほぼ防げると判断した上での粘度変更と考えられます。

 

最後に

GMは「0W20から0W40に粘度変更しても燃費の低下はごくわずか」と言っていますが、個人的には1%~2%程度燃費の低下するのではと思います。逆にいうとその程度の差です。省燃費優先かエンジン保護優先かでオイル選びは変わります。(私はエンジン保護優先派です)

 

おまけ

現実にはオイル粘度(正確にはHTHS粘度)以外に、粘度指数向上剤の性能や、ZnDTCやZnDTPなどの耐摩耗添加剤、すすを分散させる分散剤、そして新油だけでなく使用油での性能などさまざまな性能が摩耗に関わってきます。エンジン保護性能が高いオイルは粘度以外でも摩耗を防ぐ対策をして製造されています。

 

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